『この星空には君が足りない!』試し読み

皆さん、こんにちは! 『この星空には君が足りない!』の主人公、天戸すばるです。 今日は僕の上司であるアテナ様からの命で、ナナルナ、チロル、ミュレイが宿っている星の紹介をすることになりました。よろしくお願いします。 ただし! 僕の解説は、ほとんどが本編のネタバレです!! まだ小説を読んでいる途中だという方は、是非とも本編を読み終えてから解説をご覧ください。

  • まずは、ナナルナとルルナルが宿っている星から紹介します。
    というわけで、二人が駆けつけてくれました。
    ……ナナルナ? すごく緊張しているみたいだけど大丈夫?

  • ……だ、大丈夫よ。
    ちゃんと人間向けのエンターテイメントについて予習してきたんだから。
    そ、その……しちょうかいすう?みたいなやつを一杯稼いでみせるわ!

  • (……あんまり、大丈夫じゃなさそうだなぁ)

  • あぁ、緊張しているお姉さまも可愛いです!

  • それじゃあ、説明に戻ろうか。
    ナナルナとルルナルの宿る恒星は連星だったんだ

  • ひとりぼっちでぽつんと浮かんでいる星じゃなくて、
    2つの星がペアになって軌道を巡っているのよね

  • 生まれたばかりの星の多くが連星だと、すばるから習いました

  • そう。だけど二人が宿っているのはただの連星じゃなかった。過剰接触連星だったんだ。このタイプの連星の特徴は読んで字のごとく、過剰に接触していること。広い宇宙で2つの恒星が近い位置にあることすら珍しいのに、互いの外側部分がくっついてしまっている稀なふたご星なんだ

  • ルルナルたちのようにいびつな恒星は、神園宇宙の原則では星座になれません。
    このまま、お姉さまと二人で身を潜めて生きていくしかないと思っていました

  • そして、この星にはさらに問題があったんだ。過剰接触連星は、ゆくゆくは片方が、もう一方の恒星を吸収してひとつの恒星になる。そうなると、ナナルナたちは一つの恒星に星像が一柱という掟にも背くことになってしまう

  • そうなる前に私とルルナルのどちらかが、原則に従って消されなくてはいけない運命だったの。それをすばるが助けてくれたのよね。
    あの時は、その……どうもありがとう……///

  • いや、僕は別にそんな……

  • でも、過剰接触連星って見た目は雪だるまみたいな形をしているからとっても可愛らしいのよね

  • いえ、お姉さまとルルナルの愛の巣なんですからハートの形をしているはずです! 色はピンクで!

  • ルルナル、どうしてそんな嘘をつくの!?

  • でも、もしそんな楽しい星があったら、天文学にあまり興味がない人もこぞって望遠鏡を向けるだろうね

  • お姉さまとの日常生活がたくさんの人から覗き見られるというわけですか……
    いいでしょう、受けて立ちます!
    ただし、小さい子には刺激が強いので15歳以上限定で!

  • 普段からなにしているの!?

  • な、なにもしてないわよ!?

  • 真相は本編で確認してください!

  • だから、そんなのないってば!

  • 次はチロルの番なんだけど……あれ? まだ来てないみたいだな

  • すばるー!

  • あっ、きた――って、なにその数年来の修行から帰ってきたみたいな恰好!? 
    靴も片方なくなってるし!?

  • あ、あのですね、彗星列車がいきなり脱線して、大急ぎで走っていたら隕石さんとぶつかったのですよ……

  • 映画が一本撮れちゃいそうな登校風景だね……

  • でも、遅刻しなくてよかったのです!

  • いろいろ心配だけど、説明に移ろうか。チロルは宿っている恒星に問題があったわけではなくて、優秀すぎたことが原因で星像に妬まれて呪いをかけられていたんだ。今はその呪いは解けたけど、あの頃は大変だったね

  • はい、不幸の連続だったのですよ……だから、チロルは凶星と呼ばれていたのです……

  • 飼っていたペットが、いつの間にか冷たくなっていたり……

  • 道を歩けば、必ずサイクロプスさんに踏まれたりしてました……

  • (……あれ?)

  • (……あれ?)

  • (……今とそんなに変わってないんじゃ)

  • (……今とそんなに変わってないのです)

  • で、でも、最近のチロルは自信を取り戻して毎日いきいきしているよね!
    初めて出会った頃は目に映るもの全てに怯えているように見えたのに

  • はい! 昔はチロルに近づく人を不幸にしてしまうと思って怖かったのです。
    でも、今は違うのですよ!すばるに呪いを解いてもらってからは、ずっと幸せいっぱいの毎日なのです!

  • でも、相変わらず危ない目に遭いやすいんだから気を付けてね。まずは傷の消毒をしないと

  • えへへっ、ありがとうなのです

  • 靴を片方失くしちゃってるんだから、転ばないようにね!

  • わかっているのです! 
    見ていてください! チロルは絶対に転びま――(こけっ!)

  • (この子、元からほんのり不幸風味なんだよなぁ……)

  • すばばばーーーん☆

  • 奇跡だ……ミュレイが約束通りにきてくれるなんて……

  • 約束? ミュレイってば、すばるが目に入ったから挨拶しなきゃと思って飛んできたんだぁ☆

  • ですよねー

  • ねぇねぇ、すばるんるん☆ このコーナーってば、ミュレイが使っている『すばばばーん』ってあだ名が名前に入ってるね☆

  • そうそう。ミュレイが1巻のP44ページで呼んでいた僕のあだ名が使われているね。題字として映えるからじゃないかな?

  • みんなもどしどし使ってね☆

  • お客さんへのアピールも済んだところで……ミュレイの宿っている恒星は超新星爆発を起こしかけていたんだよね

  • そうなんだ☆ 一時はどうなることかと思ったし☆

  • 超新星爆発はとても明るい光を放つ現象なんだ。だから、地球からずっと離れた宇宙で発生しても肉眼で観察できる。当時の人は急に夜空の1点が光るものだから、新しい星が生まれたと考えたんだ

  • わかる☆ その気持ち、わかるなー☆

  • でも、それは間違い。超新星爆発っていうのは、重い星が死に際に起こす大爆発のことなんだ。真逆だね

  • なんてこったい☆

  • さらに、超新星爆発には特徴によって
    いくつかの種類に分類することができるんだ

  • そいつぁすげぇや☆

  • ミュレイが宿っていたのは、核融合を終えた白色矮星という星だった。そして、すでに死んだはずのその星に、伴星がガスを絶え間なく押しつけていく。
    すると、どんどん重くなった白色矮星は、ついには自重を支えきれる限界――チャンドラセカール限界を超過してしまう

  • 必殺、チャンドラセカール限界☆(今、思いついた格好いいポーズ)

  • こんな過程を経て、ミュレイの白色矮星は重力崩壊に至って超新星爆発を起こす寸前だったんだ。これがIa型超新星の概要ってところかな

  • よっ、宇宙博士☆

  • ……ミュレイ?

  • んあ? どったの、すばるんるん☆

  • 難しい話でもちゃんと聞こうね

  • はーい☆

  • とってもいい返事をありがとう。まさか、僕も超新星爆発を食いとめるために、押し寄せるガスと闘うことになるとは思わなかったよ。あの時は本当に命懸けだったから、今ここにいることが不思議に感じるね……

  • ミュレイもミュレイで、別の恒星に宿るための儀式をしていたから詳しいことは覚えてないや☆ でも、無事に一件落着したし、終わりよければ全てよしだし☆

  • これからもその明るさで、宇宙を照らし続けてください!

  • そだ☆ 今日は、すばるんるんと一緒におでかけする約束をしてたんだった☆ ほら、はやくいこうぜ☆ ナナルナとルルナルとチロルも誘ってさ☆

  • その約束は覚えているんだ……

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