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KAエスマ文庫

ヴァイオレット・エヴァーガーデン
シリーズ刊行10周年記念企画

著者 暁佳奈インタビュー〈前編〉
ヴァイオレット・エヴァーガーデンと暁佳奈

1.2025年12月に作家デビュー10周年を迎えられました。この10年間を振り返っていかがですか? 印象に残っている出来事があればお聞かせください。

KAエスマ文庫の担当編集さんに言われるまで、10周年が来るという事実にも気づいていなかったほど、この10年は嵐のように過ぎ去った日々でした。
印象に残っていることといえば、やはり『ヴァイオレット』のアニメ化、映画化です。国内外問わず愛していただける作品になれたのは、アニメーションよる表現があってこそ。デビュー作にして代表作となりました。
また、アニメが終わった後も音楽家の皆様達によるコンサートなどで、ファンの皆様の熱量が消えない姿を拝見出来たこと。企業様によるグッズのコラボレーションなどで作品をあしらった装飾品をまとったり、楽しそうにコレクションされている皆様のお姿が見られたことは、まるで遠い場所にいる友人から「元気にしている?」と尋ねられたかのような経験でした。
現在、小説家として様々なお仕事をさせていただいていますが、KAエスマ文庫さんでのデビューが様々な形で評価をいただき、のちのお仕事に繋がっています。電撃文庫さんでの新シリーズである『春夏秋冬代行者』の展開、朗読劇・ゲームのシナリオ執筆、ヴィジュアルノベルブック制作など、ご縁がご縁を呼ぶ人生となり、大変ありがたいかぎりです。

2.『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズで特に印象に残っているエピソードはありますか? またそのエピソードに込められた思いをお聞かせください。

「愛ってなんですか?」と、愛している人から残酷にも言われてしまう。
この場面の為にすべてを書き上げたといっても過言ではないので、やはりギルベルトとヴァイオレットのエピソードかな、と思います。
当時の私が人間の感情のあやふやさ、愚かさを悲しみつつも、そういう部分あるからこそ、もがいて良き方向に人は生きようとする、光り輝く何かがある、という人間讃歌を描きたかったのだろうなという想いが滲みでています。
「少女と自動手記人形」や「小説家と自動手記人形」じゃないんだ、と思う方がいるかもしれません。
もちろんそれらも大切なエピソードです。
ただ、小説の技法というか、構成的なことでいうと、様々な愛を描くからこそヴァイオレットとギルベルトの話に収束していくような形を小説はとっています。
自動手記人形という職業がある。そうした仕事が受け入れられている世界観である。ではこの愁いを帯びたミステリアスな少女は過去に何を隠しているのか。
読者の皆様が物語を紐解いていけばいくほど、様々な人の人生を通して皆様ご自身もヴァイオレットの物語に没入していき、だからこそ彼女が敬愛している人に「わからない」と伝えることがどれほど悲しいことか伝わるようになっています。

3.『ヴァイオレット・エヴァーガーデン The Anniversary -Flower-』に収録されている、 書き下ろしエピソード「ローラと自動手記人形」「花と自動手記人形」はどのような思いで書かれましたか?

とにかく読者の皆様に喜んでいただきたいという想いで大変苦しみながら書きました。
描く物語ごとに文のリズムも堅さも変えていますから、まず『ヴァイオレット』の世界に自分を戻すことが困難で、うまく戻らずもう駄目だと泣くこともしばしば。本当に泣きました。でも頑張りました。
「ローラと自動手記人形」はヴァイオレットの依頼人を通して紡ぐ感情の物語が好きな方々に向けて。
「花と自動手記人形」はC・H郵便社やギルベルト達との物語が好きな方に向けて書いた形です。
もっとこういう話が読みたかった、という方もいるかと思います。申し訳ありません。
今回はあくまで全集に収録することが前提ですから、その他の収録作品と一緒に読んでも読後の気持ちが阻害されないものがふさわしいと考え、そうさせていただきました。
分厚いので読書体勢を維持することがまず大変だと思いますが、ぜひ……ぜひ、お時間がある時にお読みいただき、感想などをいただけますと嬉しいです

後編は3月27日(金)公開予定です!
どうぞお楽しみに!