時を行き来する力を持つ時計――貸時計。
大正7年(1918年)。知り合いの時計店でお世話になっていた紫苑景季は、突然家に押し入ってきた男たちから、
店主に託された時計を守ろうとした拍子に、あやまってそのボタンを押してしまう。
そうして目が覚めると、そこは100年後の京都だった――。
平成30年(2018年)。家出をして京都の錦戸時計店で居候する光太は、
京都駅で100年前から来たとのたまう景季と出会う。
おかしな時計のせいでタイムスリップしてきたそうだが、
しかしその時計"貸時計"を失くしてしまっていた。
景季を元の時代に帰すため、光太の貸時計探しが始まるのだったが、
貸時計を巡る様々な人たちの苦悩と欲望に翻弄されていく。
誰でも変えたい過去がある。
でも過去を変えれば、すべてなかったことになるのだろうか。
貸時計伝説
それはまことしやかに語り継がれる
都市伝説。
ゲームに熱中していたり、お喋りに夢中になっていたりした時に、『あれ、もうこんな時間』と思うことがあると思う。それは時間泥棒が、あなたの時間を盗んでいるんだ。
時間泥棒は、時を行き来する力を持った≪貸時計≫を使って、誰かの時間を盗む。盗まれた人はその時間分だけ未来へ飛ぶ。そして未来のある時点で突然現れる。
盗んだ時間は貸時計の中に貯まっていって、貯めた時間分だけ過去に戻ることができるんだ。
貸時計は神出鬼没で、いつの間にかポケットに入っていたり、普通の時計に紛れて時計屋で売られていたりすることもある。
でもいつから存在するのか、誰が何のために作ったのか、そしていくつ存在するのか。
それは誰にもわからない――。